柴犬から「Shiba Inu」へ。ワールドワイドな人気となっている柴犬。寿司が「Sushi」、天ぷらが「Tempura」となって日本料理の定番になったのと同じく、一過性の流行で終わらず、根強い愛好家に支えられています。

今回は公益社団法人「日本犬保存会」に所属する岩佐和明さんに、海外で人気を呼んでいる理由をうかがいました。岩佐さんは日本犬の品評会の審査員として、1998年から海外でも活動しています。

■日本文化の一つ

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約20〜30年前から、世界各国で日本文化の認知度が高まりました。その一つとして注目を集めたのが日本犬です。柴犬を含む日本犬は、国の天然記念物に指定されている動物です。このことも文化の一つとして認知された理由かもしれません。柴犬は日本犬の中で最も人気が高く頭数も多い犬種なので、代表格として広まっていったのでしょう。

■オオカミに近い原始的な姿

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柴犬は日本人の祖先と共にやってきました。少なくとも1万年にわたり自然の中で育まれてきた犬です。一部の洋犬のように人為的に作られた犬ではなく、最もオオカミに近い原始的な姿を残しています。それが海外の人の目には新鮮に映るようです。

■飼いやすい性格

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日本人との共同生活で育まれた性格は、日本人によく似ています。礼儀正しく節度をわきまえた性格は、共に暮らしても苦にならないのでしょう。家族のことをよく観察しているので、その場の状況を察して振る舞うこともできます。世界中の人に「飼いやすい」といわれる所以です。

■知性を感じさせるまなざし

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柴犬の黒い瞳は、驚くほど知性にあふれ、表情も豊かです。笑ったり、怒ったりしたときのコントラストも特徴の一つ。「目は心の窓」といわれるとおり、そのときの素直な気持ちを伝えてくれます。猟犬としての歴史から、ふとしたときには獲物を見つめるような鋭さも。目が大きいわけではありませんが、まなざしに強い力があります。

■においが少なくて清潔

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きれい好きな性質で、住まいでの排泄を好みません。汚れがつきにくく、体臭が少ないので清潔感があります。かつては屋外が主流でしたが、近年日本でも海外でも室内で飼うスタイルが増えています。

■人との適度な距離感

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洋犬はハグを好みますが、柴犬は必要以上にまとわりつかないあっさりした性格で、家族が「構わないでほしい」と思うときには距離を保ち見守ってくれます。パートナーとして長い間付き合っていくには、最適な性格といえるでしょう。人との距離が近いラブラドール・レトリーバーのような犬種と暮らした人が、「パーソナルスペースの広い犬がいい」と、柴犬を希望するケースもあるそうです。

■奥行きがある、味わい深い毛色

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柴犬の毛色は、赤毛、黒毛、胡麻毛。加えて白毛も少数ですが存在しています。いずれも暑苦しい原色のような色ではありません。毛の1本1本に濃淡があり、ぼかし絵や墨絵のような、深みのある毛色を生み出しています。国内外を問わず赤毛の人気が高く、約8割を占めます。「ブラック・タン」を好む方は黒毛、希少価値が高い胡麻毛を好む人もいます。

■高い運動能力

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日本の猟は「一銃一狗」、1人の猟師と1頭の犬で行ないます。欧米の猟は、犬によって、獲物を探す、追跡する、追い立てる、回収するといった役割分担があり、複数頭を連れていくスタイルが主流です。それらを1頭で行うことができる柴犬は、高い運動能力を持っていると言えます。

■シンプルイズベスト

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姿形に余計なものがないことも大きな魅力です。全てをそぎ落としてたどりついた究極の美といえます。初めて柴犬を見たアメリカ人は、「こんなビューティフルな犬はいない」と感嘆したとか。柴犬の研ぎ澄まされた美しさは、世界共通なのでしょう。

■忠犬の代名詞

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姿形やしぐさから凛々しさを感じることができます。また、日本人との長い共同生活によって育まれた気質は、家族を大切に守り、外敵と戦う頼もしさも備えています。

■まとめ

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日本犬保存会では、世界各国の品評会に岩佐さんをはじめ審査員を派遣しています。その理由は、日本原産の柴犬を守るため。柴犬より一足早く海外で人気が出た秋田犬は保存活動が間に合わず、血統が分かれてしまったからです。

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1930年代に忠犬ハチ公の逸話がアメリカのメディアに取り上げられ、秋田犬が次々に輸出されて繁殖された結果、秋田犬らしさを失っていきました。現在は「アメリカン・アキタ」と呼ばれ、秋田犬とは違う犬種として登録されています。その二の舞を踏まないように、柴犬を守ることも保存会の大切な役目です。

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<了>