人の生活に欠かすことのできない住居。一口に住居と言っても、住む人々の生活スタイル、立地条件や天候など、さまざまな要因によって全く異なるデザインになっています。

長らく同じ地域で暮らしていると、その地の家並みが当たり前になってしまい、なかなか家屋の違いを考える機会はないかもしれません。しかし、世界に目を向けてみると、日本では思いもつかないすごい住居が多く存在しています。

今回は、世界にある珍しい造りの住いを7つご紹介。現地の方々の生活と強く結びついた「家」の特徴に着目してみると、その地ならではの生きる知恵が沢山見えてきます。

日本の「かまくら」にそっくり!雪によって成形された家(カナダ北部)

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カナダのマッケンジー河口付近からラブラドル半島にかけて広がるツンドラ地帯。極寒の冬は、気温がマイナス30度〜40度まで下がります。

この地で暮らしている先住民族イヌイットは、「イグルー」と呼ばれる伝統家屋に暮らしています。この地域では家を建てる木材が手に入らないため、家を形ち造る材料は雪のみ。
ドーム状の形状は日本の「かまくら」のようですが、「イグルー」は雪で固めたブロックを積み上げて作られているため、より強固な作りになっています。

掘り抜いた穴の中に家がある?!不思議な地下洞窟の家(チュニジア・マトマタ)

チュニジア南部にあるマトマタには、先住民族ベルベル人が暮らす地下洞窟の中に家があります。しかし、1969年に起きた大洪水によって住民の生活拠点を地上に移し、旧マトマタと新マトマタの2つに分かれました。この地下洞窟で知られているのは「旧マトマタ」です。

旧マトマタにある地下洞窟の家は、12〜13世紀頃この地に侵入してきたアラブ民族から逃れるため避難用の穴を掘り、そこに住み着いたことが始まりと言われています。

内部の構造としては、7〜8mに及ぶ大きな穴を掘削して中庭を作り、その側面にさらに穴を掘り部屋として使っていました。

スターウォーズの第1作目に登場する惑星タトゥイーンのルーク・スカイウォーカーの家のロケ地となった場所としても有名で、かつて人々が暮らしていた穴居住宅を利用したホテルに宿泊することもできます。

まるでおとぎ話の家!白い壁にトンガリ屋根(イタリア・アルベロベッロ)

Mikaさん(@mikarin_11)がシェアした投稿 – 2017 7月 17 1:56午後 PDT

イタリア南部のプーリア州にある、アルベロベッロ。この街には「トゥルッリ」と呼ばれる伝統家屋が立ち並び、家々の合間を縫うように広がるかつての石畳は迷路のよう。

この街のトレンドマークとなっているのが、まるでおとぎ話に出てくるようなトンガリ屋根。漆喰の円形型の家の上に伸びる灰色の屋根と、描かれた白い模様が特徴です。1996年に世界遺産として登録されたかわいらしい街並みを一目見ようと、世界中から観光客が集まっています。

ただし、このフォルムは決してかわいらしさを重視して作られたのではありません。

紫外線が強く、降水量が少ない気候のなかで、少しでも快適に生活するための工夫として作り出された形なのです。

白い壁は紫外線防止、保温、室内を明るくする効果があり、円錐型の屋根には、雨を傾斜によって集め、生活用水に利用するための工夫が施されています。

家が舟のカタチ!釘を使わない木造家屋(インドネシア・スラウェシ島)

インドネシアのほぼ中央にある、スラウェシ島。この島の高地には「タナ・トラジャ」という山岳地帯があり、先住民族トラジャ族が暮らしています。

トラジャ族は木造家屋の「トコンナンハウス」を住みかとし、両端が天に向かって反り返る形はまるで舟のよう。トラジャ族がインドネシアへ渡る以前、海洋民族であった当時の名残と言われています。

屋根は釘を1本も使わず、竹と藁で組み上げられます。屋根の下は高床式で、住居や穀物貯蔵庫の役割を果たしていました。
しかし窓が作れなかったり室内が狭かったりと、住居としては不便な面が多いため、現在は住むためではなく一族の象徴として建てられています。

面積は琵琶湖の10倍!学校から警察までも揃う水上集落(カンボジア・トンレサップ湖)

カンボジアのシェムリアップは、世界遺産「アンコールワット」が有名ですが、もう一つ欠かせないスポットがあります。それは東南アジア最大の湖「トンレサップ湖」。雨季になると琵琶湖の10倍以上の面積になる巨大な湖です。

この湖には、100万人を超える水上生活者が集落を作って暮らし、学校、病院、警察、ガソリンスタンドなどの施設まで揃っています。「浸水林」と呼ばれる、湖の中に生えた木に家をつないでおくことで、流されないようになっています。

水上を移動する際は、手漕ぎの舟やエンジンがついた舟だけでなく、舟代わりのタライなど、さまざまな道具が用いられています。

自然と生きる民族の証。牛フンで固めた円柱型の家(ナミビア・クネネ州)

降雨量の少ないナミビア北部のクネネ州には、牛を中心とした家畜の遊牧を生業とする「ヒンバ族」が暮らしています。女性はオカと呼ばれる赤い泥粉と牛の脂肪を混ぜたものを全身に塗りこみ、皮の腰布を巻いて生活をしています。これはナミビアの気候の特徴から、日焼けや虫除け効果、乾燥を防ぐための役割を担っています。

そんな彼らの住居に使われるのは「牛フン」。木の枝でドーム型に家を成形させたあと、壁に牛フンを塗り固めて作られています。屋根に使用するのは藁。

人工的なものを一切使わず、すべて自然の恵みによって造られています。

壁全体に幾何学模様!カラフルな壁絵が美しい家(南アフリカ共和国・プレトリア)

カラフルな民族衣装、個性的なデザインのアクセサリー、首元や足元に幾重にも重ねられたリング。時に25キロものアクセサリーをつける「ンデベレ族」は、南アフリカ共和国のプレトリアに暮らしています。

ンデベレ族の女性たちの美に対する意識はとても高く、そのこだわりは住居にも。水性ペンキでカラフルな幾何学模様を描いています。極彩色の使い方や、左右対称模様の壁絵は世界的に見ても珍しく、定規などを一切使わず、白い漆喰に黒い輪郭線をフリーハンドで描くのだから驚きです。この文化は母から娘へと代々引き継がれ、「ンデベレ族」を象徴する独自の文化になっています。

それぞれの文化が築き上げてきた、現地ならではの「家づくり」

今回ご紹介した伝統家屋は、現地の人びとの生きる知恵によって編み出されたもの。この7つ以外にも、世界には気候や生活スタイルの違いに適応した家が多く存在しています。

様々な暮らしぶりが伺える「家」には、定番の観光スポットとは違う面白さが沢山あります。
現地ならではの違いに目を向けてみると、これまでとは違う世界が広がるかもしれませんね。