前編では、Webメディアと紙メディアの違いに始まり、編集者は何を目指していくべきなのかという話題が登場しました。その中でも、常に影のように存在していたのが「マネタイズ」の問題です。後編では、「メディアはどうマネタイズしていくことができるのか」というテーマが語られました。

【ファシリテーター】
・前島恵(本文:前島)
株式会社kairo代表取締役。ウェブメディア「credo」編集長を務める

【ゲスト】
・佐藤慶一(本文:佐藤)
フリー編集者として講談社のウェブメディア「現代ビジネス」の企画編集・ライティングを行う。運営するブログ「メディアの輪郭」でも知られる

・小川未来(本文:小川)
アシスタントエディターとして、菅付事務所でアートブックや新書の編集に携わる。「livedoor」ポータル上のタイアップ記事制作をサポート

前島:対談の最初で、ポパイがすごく尖った主張を書いているのに、僕達Webメディアが同じようなことをできない理由は「マネタイズ」の構造にあるという話が出ました。後半は、メディアの「マネタイズ」の仕組みにはどんなものがあるのかという話から始めたいと思います。

お金を払ってコンテンツを読む権利を買う:サロン型


佐藤:最初に僕が所属していた「greenz」に代表されるコミュニティサポート型を紹介します。「greenz」は広告収入という色を薄めて寄付会員からお金を集める形をとっています。

小川:「greenz」が面白いのは会員には紙の冊子を発行している部分。それを読むと、どんなライターがいるのかとか、メディア製作の裏側を知ることができる。もはや寄付会員はファンクラブのようなもので、いうなれば「会いにいけるメディア」だと思う。

佐藤:Webに限らずに言えば、農業のCSAとかビジネスモデルとして近いと思う。サロン型のビジネスモデルは最終的に「コミュニティに支えられて運営するメディア」という形に行き着くのかもしれないですね。

多数対多数のやり取りを見る:権利購入型

前島:例えば「755」みたいな覗き見願望を刺激するのがこの形だと思う。

小川:まさにそう。特に議論が活性化していたりするとコメントしないロム専でも十分楽しめる。権利を購入する形だから公開されているWebというよりも、地下闘技場のバトルを観戦してる感覚に近い。

この形で重要になってくるのがある種の「突っ込まれる力」だと思う。隙がある発言をして、そこを突っ込まれる。炎上とまではいかずとも、引火する力はWebのコンテンツを作る上で一つの強みにはなってくると思う。

佐藤:現実の世界で言うと「音楽フェスのチケットを買っている感覚」に近いと思います。フェスのチケットを買うと、全てのライブを見る権利を得られるけれど、見なくてもいい。これはWebのコンテンツで言うと、「メディアのコミュニケーションに参加してもしなくてもいい権利を買っている状態」に近いと思います。時間と場所の使い方を選択できるのがこのビジネスモデルに参加する時の特徴なんじゃないでしょうか。

専用アプリで楽しむ:アプリ型

佐藤:紙のメディアがWebコンテンツに適応する時の流れの中で現れたのが、専用アプリを通じてコンテンツを提供する方法だと思っています。

前島:雑誌を買うことが「欲しいコンテンツと興味が無いコンテンツを一緒に手に入れること」であるのに対して、Webは「欲しい部分だけ手に入れること」という違いがあると思います。でもアプリにすることで、Webでも雑誌のようにコンテンツを束にして買ってもらえるようになるという特徴があるんじゃないでしょうか。

小川大宅文庫に行くと、昔の雑誌がアーカイブ化されていて、例えば大昔のアイドルに関する記事を何年経っても閲覧することができる。それって「未来に対して可能性を開いていること」にも繋がっていると思う。アプリ化することで、これに近い、つまりアーカイブ化されていくことも忘れちゃいけない特徴だと思います。

編集とはなにか

小川:最後に紹介する本は『はじめての編集』という本です。この本は個人的に編集者に憧れるきっかけになった本でもあります。

この本によると編集は3つの段階で定義されています。

1.企画を立てて
2.人を集めて
3.モノを作る

佐藤:編集の仕事について、世の中に出ているのは「モノを作る」っていうカッコいいところだけだと思う。この定義で言う「人を集める」とか「企画を立てる」って部分をしっかりと書いてあるのが、この本の良いところだと思います。

一方で、スマートニュースが「人工知能が編集長」と表現されていたこともすごく印象的だった。

前島:この対談の最初にも言いましたが、「編集」の定義がものすごく揺らいでいるように感じています。今回お話した範囲では、キュレーションメディアやバイラルメディアにおける「編集」は、「編集」の範疇には入らないですね。

小川:そう、キュレーションメディアとかバイラルメディアは「モノを作って」はいるけれど「人を集めて」はいないと思う。

確かに面白い切り口だったりはするけれど、あるペルソナに特定の感情を抱いてほしいからといって、表面的な包装を変えるだけでは本質が変化していない。それはつまり「人を集めていないこと」だと思う。

前島:Credoの編集をしていて日々感じていることですが、僕にとっての編集とは「創造性の創造」です。直接的に何かを生み出すというよりは、「人やコンテンツを結びつけて、そこに創造性が生まれ手助けをする」イメージですね。Webにおける様々な事象は、建築や都市工学を題材に語られることが多いです。

今回の議論の文脈で言うと、編集者やコンテンツメイカーを「都市に暮らす人々」。Webサービスなどのプラットフォームを作る人を「建築家」に例えることができ、僕は後者になりたいと考えています。

建築の考え方に近いけれど、自然に振る舞うと、一見それは効率的ではないけれど、動きやすいプラットフォームのアーキテクチャを作りたいと思っています。

小川:今、Webの編集者の参入障壁はとても小さいよね。誰でもサーバーを借りて、ドメインを取って、WordPressを入れればWebの編集者だって名乗ることができる。さっきの編集者の定義の話に戻るけど、編集の仕事って「インタビューが基本にある」ってみんな口をそろえて言っている。

だって、インタビューはまさに「1.企画を立てて 2.人を集めて 3.モノを作る」ものだから。まだ社会に居場所がないヒト・モノ・コトを、企画とサービスで価値にしていくことをしたい。それは紙にも、Webにも、それこそテレビにも限定されないものを目指しています。

佐藤:バイラルメディアもキュレーションメディアも、どうすればいいかある程度道が見えやすいのが特徴だと思う。どう書いたら記事を沢山読んでもらえるかとか、拡散されやすいかといった道が見えやすい。それはつまり、どんどんと効率化、機械化が進んでいくことだとも言える。

だから、道が見えているからこそあえて「その道を外れられる人」の方が編集者としてバリューを出していくことができると思っています。例えば、僕の地元の佐渡ヶ島はトキが有名だけど、そこにまだ知られていない「新しい何か」との関係性を見つけて提案していきたい。

三谷幸喜が「期待に応えて、予想を裏切る」って語っているけど、まさにこれ。コンテンツを受け取る人の一歩先ではなく「半歩先」の、ちょっと知っているけどそれを上回る驚きがあるコンテンツを作れるようになりたいと思っています。

※【前編】はこちら
「編集者」はどこを目指して歩むべきなのか?ウェブ生まれの編集者が本屋で語るこれからの編集・メディア論