想像をこえる景色が世界にはあふれている。そこには美しさがあり、感動があり、安らぎがある。しんしんと流れる時間の中のほんの一瞬、目の前の景色と自分との境目がなくなっていくような錯覚をおぼえる。感情は無重力世界に放り出されたように宙を舞い、シャッターをきることを忘れるくらい目の前に広がる空間に夢中になる。

きっとそういう場所との出会いは旅の醍醐味のひとつであり、そういう場所で過ごす時間はきっと人生に彩りを加える。ここでは1062日間の旅を経験した筆者が世界一周の旅行先で見つけた、とっておきの旅行スポットを紹介したい。

①ケープマクレア(マラウイ)

travel_02

アフリカ大陸南東部に位置するマラウイ。その国土の20%を占めるマラウイ湖の南端にケープマクレアという村がある。緊張感が途切れることのなかったアフリカ縦断の日々のなかで唯一ほっと一息つけた場所。

travel_03

湖は澄んでいて、空は青く広がり、木々はその緑を力強く輝かせている。朝にテントをたて、昼は湖畔でウクレレを弾き、夜はたき火をして波音をBGMに星を眺める。「なにもない」があるその場所で「なにもしない」をしながら、これ以上求めるものはひとつもないのかもしれないと思った。

②ジェリコアコアラ(ブラジル)

travel_04

ブラジル北部、大西洋に面した砂丘と海の町、ジェリコアコアラ。町全体が砂浜の中にあるようなその町の白い砂の道路にビーチサンダルの足跡が連なる。

青く透明な海の上ではウインドサーフィンをする人が風をきり、真っ白な小高い砂丘を駆け上がって子供たちが遊ぶ。町ではカポエイラを踊る青年がいて、ビーチに座ってゆっくりとピニャコラーダ(ラムベースのカクテル。パイナップルジュースとココナッツミルクをシェイク)を飲むカップルがいる。ハンモックに揺られながら本を読むおばあちゃんの隣で、商売道具のアクセサリー作りに勤しむヒッピーがいる。

travel_05

全く違うことをしているはずのすべての人にとって、この町はそれをするのに最適な場所なんだろうなと思えるような、あたたかく優しい空気に満ちた町。

③愛のトンネル(ウクライナ)

travel_07

ウクライナのクレヴァンという町にある緑が美しいロマンチックなトンネル。まるで絵本の中のワンシーンのようなそのトンネルを歩きながら、ここがほんとに絵本の世界だとしたらその見開きのページの右上にどんな文章をそえるのがいいだろう、そんなことを考える。

遠くから列車の走る音が近づく。重なる葉の隙間から差し込む光が貨物列車を照らし、それにこたえるように列車はきらきらと輝きながら走る。きっとその輝きは差し込む光によるものだけではなく、その場所を走り抜ける誇りのようなものが眩しく見てとれる。

夏は新緑の、秋には紅葉の、冬には雪のトンネルが見ることのできるこの場所が、もし本当に絵本だとしたら、そのページははじまりのページにふさわしいと思った。

④グアタぺ(コロンビア)

travel_08

南米の北西部に位置するコロンビアの自然に囲まれた片田舎にひっそりと存在するカラフルな町。絵具セットを全部使いきって描かれたようなその町は、おもちゃ箱の中のように楽しさがつまっていて、歩いているだけで心が躍る。その色使いは、南米の持つ陽気さ、コロンビアの持つ優しさと、とても相性がいい。

travel_09

近くに流れる川に架かる大きな橋から子供たちが川に飛び込み遊んでいるのを、岸辺の芝生に座って眺める。移動続きの南米旅で、めずらしくゆっくりと過ごしたグアタぺ。何かを彩るということは、その余白にまで意味をもたらす。上空をゆっくりと流れる真っ白な雲を見上げながらそんなことを考えた。

⑤トロルの舌(ノルウェイ)

travel_10

フィヨルドで有名なノルウェイにある断崖絶壁の絶景スポット。ここが目的地なんじゃないかと思えるような美しい景色をひとつひとつ通過点に変えてたどり着いたその場所は、これまで生きてきた世界と続いているのか疑いたくなるほどの圧倒的で。

恐竜がここに飛んでいたとしても違和感なく受け入れてしまいそうな非現実感に浸りながら、お弁当のおにぎりを頬張り、その食べなれた味で現実感を思い出す。

嘘みたいな景色は本当にあって、それは夢みたいな明日を目指す原動力になる。通過点を楽しみながら、いつかその場所でもまたおにぎりを食べたいと思った。

以上が筆者おすすめの旅行スポットである。これらの場所を目指す旅に出るのもいいし、自分だけのおすすめスポットを見つける旅に出るのもいい。世界は広く、美しい。そう感じる瞬間はきっと一歩を踏み出したその先にある。

(文:松谷一慶)