ユーロ離脱騒動で世界から注目を集めるギリシャ。世界中の人々が固唾を呑んで、ギリシャとEU諸国の行動を見守っています。ユーロ離脱に関する国民投票とギリシャ政府の対応を振り返りながら、今後のギリシャの展望を見て行きましょう。

ギリシャ財政の再建を問うために開かれた国民投票

2015年7月5日、ギリシャ在住の18歳以上の有権者約1,000万人を対象にした国民投票が実施されました。まずは、国民投票を迎えるまでの国内外での動きに焦点を当てていきます。

ユーログループ提案の財政改革策に反対するギリシャ政府

ユーロ圏財務相会合にて、欧州委員会(EC)・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)の三者からなる国際債権団(通称:ユーログループ)は、ギリシャ財政の改革案を提案しました。しかし、ギリシャのチプラス首相は国際債権団の提案を拒否する態度をとり、財政緊縮策への賛否を問うための国民投票を実施すると宣言しました。

真の争点は「通貨問題の改革と政府債務の持続可能性分析を行うか否か」

Photo By Bob Dass

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国際債権団が提案した2つの項目を、ギリシャとして受け入れるべきか受け入れないべきか、Yes or No を有権者に問いかけることが国民投票における真の争点でした。

  1. 通貨問題を終了させるまでの改革と終了後の改革を実施すること
  2. 政府債務の持続可能性の分析を行うこと

ただし、政府は国民投票の争点を明らかにしませんでした。むしろ、国民投票でNoという結果が出れば、国際債権団と有利に交渉できるようになると政府は訴え続けました。チプラス首相は賛成派が優勢ならば辞任するとまで公言し、ギリシャ政府は強気な姿勢で国民投票を迎えました。

有権者の多くは国民投票の争点を理解していなかった

ギリシャの有権者は、政府や国際債権団の対応に混乱し、興奮状態に陥っていました。そのため、冷静に国民争点の真の争点を理解している有権者は少なく、各自が自分なりの解釈で国民投票を迎えようとしていました。

「投票でNoと答えるとユーロから離脱することになる」「(Yesと答えれば)ギリシャ債務の持続可能性を明らかにできる」「投票してもしなくても現状は良くならない」など、有権者の国民投票に対する認識はバラバラでした。

共通して言えるのは、国際債権団の提案を飲むか、飲まないかという国民投票の真の争点を大半の有権者は正確に認識していないという状態のまま、投票が実施されてしまったということです。

ギリシャ国民の意見は、経済状況や居住場所によって意見が異なっていた

ギリシャの首都アテネから程遠くないエーゲ海に浮かぶポロス島は、ギリシャ国内の混乱による影響を顕著に受けた観光地の一つです。ギリシャ国内においても、地域によって有権者の反応は異なっています。

Photo By max_ilias

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ユーロ脱退に関する混乱が原因となり、通常では大量の観光客が来る時期にも関わらず、ポロス島の観光客が激減しました。ギリシャ国内の観光客はお金がないため来られず、海外からの観光客もほとんど来なくなったからです。ホテル経営者は、普段は一杯の人々がいなくなってしまったことを嘆いています。

一方、ポロス島の人々は通貨危機に備え、原始的な物々交換を行うようになりました。ミルクなどを市場に持ってきて、食べ物などの物質と交換するようになったのです。首都アテネと違ってポロス島にはギリシャで何が起こっても生き残ることができるとの雰囲気が有権者の間には漂っていました。

ギリシャは財政再建に邁進することに

ギリシャ内務省の報告によれば、反対が61.31%、賛成が38.69%という結果で国民投票は幕を閉じました。ギリシャは、国際債権団の財政緊縮策を受け入れないという民意が示されたわけです。ギリシャ政府は、国民投票で明確になった民意を盾に、新たな財政再建策を欧州連合側に提出しました。

グレグジット(ギリシャのユーロ離脱)は避けられた

Photo By Jeff Djevdet

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ギリシャ政府は、グレグジット(ギリシャのユーロ離脱)をちらつかせながら、欧州連合(EU)側との交渉を続けました。ドイツのみはグレグジットを推奨していましたが、他のEU加盟国はグレグジットを回避するために尽力しました。その結果、グレグジットは回避され、ギリシャは財政緊縮案を承認することを決意しました。

ギリシャ政府の決断は仕方ないが、国民に失望感と危機感を与えた

Photo By angel_ina

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国際債権団の財政緊縮策に対する反対を謳っていたにも関わらず、真逆の財政緊縮案を受け入れた政府に対しては、有権者は失望感を抱いています。しかしながら、ユーロ圏に残留したことに対しては好感を持っている国民も多くいます。

ただし、結果としては財政緊縮策を実行することになった現状に危機感を持っている有権者も多く存在しています。また、一連の騒動を通して喪失したEUから信頼獲得の重要性を訴える国民も少なくはありません。一つの山場を乗り越えたギリシャ政府でありますが、課題は山積みです。

ギリシャはユーロ圏に残留し、財政再建に突き進んでいく

グレグジットという影響力の大きすぎる結末は回避することができましたが、ギリシャの将来には数多くの暗雲が立ち込めています。チプラス首相のリーダーシップによるギリシャの再建を期待しながら、今後の動向を見つめていきましょう。

文:Social Likers! by JCTV

参考:ギリシャ国民投票、「緊縮策に反対」は61.31% 最終結果

画像出典:flickr